昔のCDの方が高音質? ~炎のさだめ(TETSU)~ [新旧CD聴き比べ]
時代とともに変わるCDのマスタリングを試聴して検証するこのシリーズ。今回は「装甲騎兵ボトムズ」の主題歌で、織田哲郎が歌う「炎のさだめ」をとりあげます。
炎のさだめ
作詞:高橋良輔、作曲・編曲:乾裕樹、歌:TETSU (織田哲郎)
「装甲騎兵ボトムズ」は日本サンライズ制作のSFロボットアニメで、テレビシリーズ全52話が1983年4月から約1年間にわたり放映されました。主題歌「炎のさだめ」は織田哲郎がTETSU名義で覆面歌唱しており、高橋良輔監督の手による「むせる」歌詞で有名です。
主題歌シングルレコードは1983年4月21日にキングレコードから発売されています。通常、17cmシングルはレコードを格納する紙のエンベロープとは別にジャケット&歌詞カードが付く2ピース構成が一般的なのですが、本作はエンベロープの表裏にジャケットと歌詞が直接印刷されており、別紙の歌詞カードは封入されていません。
収録されている波形を以下に示します。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。平均音量は -18.3dBFS です。試聴用にはBメロの0分27秒あたりからサビへの入りを切り出しました。なお、本ページに掲載の音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
K06S-3048 (1983/4/21)
炎のさだめ (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -18.3 dBFS (RMS)
17cmシングル
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
次にCD音源ですが、新旧3種類を用意しました。1枚目は1986年発売の「装甲騎兵ボトムズBGM集Vol.1」に収録の「炎のさだめ」です。このCDは1983年7月21日に発売されたLPレコード K22G-7136 をCD化したもので、1993年に再販されています。
この頃はまだ業界の音圧戦争が始まる前ですので、アナログレコードと同様の自然な波形で収録されています。平均音量は -16.2dBFS です。掲載した試聴用サンプルは、アナログレコードとボーカルの音圧が同じになるように -2dB の音量補正を行っています。
K30X-7015 (1986/6/5) / 再販 KICA-2136 (1993/2/5)
炎のさだめ (CD 1986年盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -16.2 dBFS (RMS)
CD 1986年盤 (音量補正 -2.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
2枚目のCD音源は、2005年発売の「装甲騎兵ボトムズ 総音楽集」に収録の「炎のさだめ」です。この総音楽集はCD3枚組で、TVシリーズのBGM集Vol.1~3の3枚を網羅し、さらに未収録曲が追加されたコレクターズアイテムです。
このころになると音圧maxのマスタリングが当たり前になっており、御多分に洩れず本作もやや海苔波形化してしまっています。ピークこそ -0.01 dBFS と寸止めしていますが、平均音量は -13.1 dBFS と、1986年のCDより +3dB の音圧アップです。そのまま聞き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用サンプルは -5dB の音量補正を行っています。
KICA-681~3 (2005/2/23)
炎のさだめ (CD 2005年盤)
最大音量 -0.01 dBFS (Peak)
平均音量 -13.1 dBFS (RMS)
CD 2005年盤 (音量補正 -5.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
3枚目のCD音源は、2009年発売のコンピレーションアルバム「サンライズ ロボットアニメ大鑑」に収録の「炎のさだめ」です。平均音量は -13.1 dBFS と2005年盤の総音楽集とほぼ同じで、同一マスタリングの音源と推定されます。試聴用サンプルはこれも同じく -5dB の音量補正を行っています。
KICA-3101 (2009/11/26)
炎のさだめ (CD 2009年盤)
最大音量 -0.01 dBFS (Peak)
平均音量 -13.1 dBFS (RMS)
CD 2009年盤 (音量補正 -5.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
聞き比べてみた印象はいかがでしょうか? 2005年盤も2009年盤も、最近のベッタリとした海苔波形を見慣れた目には、まだまだ良心的な部類に映ります。ボーカルの歪み感もそれほど気になりません。ただ、やはり声量の大きなパートでのアタック感の差はやや耳につきます。海苔波形特有の定位のブレも気になります。サビの「地獄を見~れば~」の「れ~ば~」の後ろで鳴ってるストリングスに着目すると違いが分かりやすいでしょうか。
後から出る全部入りのコレクターズアイテムの方が音質も良ければ最高なんですが、より良い音質のソースを求めて古いプレスのCDを探す受難の旅路はまだまだ続きそうですね。
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炎のさだめ
作詞:高橋良輔、作曲・編曲:乾裕樹、歌:TETSU (織田哲郎)
「装甲騎兵ボトムズ」は日本サンライズ制作のSFロボットアニメで、テレビシリーズ全52話が1983年4月から約1年間にわたり放映されました。主題歌「炎のさだめ」は織田哲郎がTETSU名義で覆面歌唱しており、高橋良輔監督の手による「むせる」歌詞で有名です。
主題歌シングルレコードは1983年4月21日にキングレコードから発売されています。通常、17cmシングルはレコードを格納する紙のエンベロープとは別にジャケット&歌詞カードが付く2ピース構成が一般的なのですが、本作はエンベロープの表裏にジャケットと歌詞が直接印刷されており、別紙の歌詞カードは封入されていません。
収録されている波形を以下に示します。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。平均音量は -18.3dBFS です。試聴用にはBメロの0分27秒あたりからサビへの入りを切り出しました。なお、本ページに掲載の音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
K06S-3048 (1983/4/21)
炎のさだめ (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -18.3 dBFS (RMS)
17cmシングル
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次にCD音源ですが、新旧3種類を用意しました。1枚目は1986年発売の「装甲騎兵ボトムズBGM集Vol.1」に収録の「炎のさだめ」です。このCDは1983年7月21日に発売されたLPレコード K22G-7136 をCD化したもので、1993年に再販されています。
この頃はまだ業界の音圧戦争が始まる前ですので、アナログレコードと同様の自然な波形で収録されています。平均音量は -16.2dBFS です。掲載した試聴用サンプルは、アナログレコードとボーカルの音圧が同じになるように -2dB の音量補正を行っています。
K30X-7015 (1986/6/5) / 再販 KICA-2136 (1993/2/5)
炎のさだめ (CD 1986年盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -16.2 dBFS (RMS)
CD 1986年盤 (音量補正 -2.0dB)
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2枚目のCD音源は、2005年発売の「装甲騎兵ボトムズ 総音楽集」に収録の「炎のさだめ」です。この総音楽集はCD3枚組で、TVシリーズのBGM集Vol.1~3の3枚を網羅し、さらに未収録曲が追加されたコレクターズアイテムです。
このころになると音圧maxのマスタリングが当たり前になっており、御多分に洩れず本作もやや海苔波形化してしまっています。ピークこそ -0.01 dBFS と寸止めしていますが、平均音量は -13.1 dBFS と、1986年のCDより +3dB の音圧アップです。そのまま聞き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用サンプルは -5dB の音量補正を行っています。
KICA-681~3 (2005/2/23)
炎のさだめ (CD 2005年盤)
最大音量 -0.01 dBFS (Peak)
平均音量 -13.1 dBFS (RMS)
CD 2005年盤 (音量補正 -5.0dB)
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3枚目のCD音源は、2009年発売のコンピレーションアルバム「サンライズ ロボットアニメ大鑑」に収録の「炎のさだめ」です。平均音量は -13.1 dBFS と2005年盤の総音楽集とほぼ同じで、同一マスタリングの音源と推定されます。試聴用サンプルはこれも同じく -5dB の音量補正を行っています。
KICA-3101 (2009/11/26)
炎のさだめ (CD 2009年盤)
最大音量 -0.01 dBFS (Peak)
平均音量 -13.1 dBFS (RMS)
CD 2009年盤 (音量補正 -5.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
聞き比べてみた印象はいかがでしょうか? 2005年盤も2009年盤も、最近のベッタリとした海苔波形を見慣れた目には、まだまだ良心的な部類に映ります。ボーカルの歪み感もそれほど気になりません。ただ、やはり声量の大きなパートでのアタック感の差はやや耳につきます。海苔波形特有の定位のブレも気になります。サビの「地獄を見~れば~」の「れ~ば~」の後ろで鳴ってるストリングスに着目すると違いが分かりやすいでしょうか。
後から出る全部入りのコレクターズアイテムの方が音質も良ければ最高なんですが、より良い音質のソースを求めて古いプレスのCDを探す受難の旅路はまだまだ続きそうですね。
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昔のCDの方が高音質? ~LOVEさりげなく(太田貴子)~ [新旧CD聴き比べ]
時代とともに変わるCDのマスタリングを試聴して検証するこのシリーズ。今回は「魔法の天使クリィミーマミ」後期ED曲で、太田貴子が歌う「LOVEさりげなく」をとりあげます。
LOVEさりげなく
作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎、編曲:西村昌敏、歌:太田貴子
実はこの曲、B'z結成前の松本孝弘がスタジオミュージシャンとして参加しており、太田貴子の舌足らずなアイドル歌唱とはやや釣り合わない、ド派手なギターソロが間奏に入っていることでも有名です。アニメ本編のED映像は、主人公のアイドルが出演するミュージックビデオ風になっていて、楽曲とよくシンクロする洒落た作画が、女児向けアニメらしからぬ垢抜けた印象を与えていました。
というわけで、まずは1984年発売のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。平均音量は -19.5dBFS です。試聴用には0分50秒あたりからサビの部分を切り出しました。なお、本ページに掲載の音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
ANS-2009 (1984/1/25)
LOVEさりげなく (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -19.5 dBFS (RMS)
17cmシングル
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
次にCD音源ですが、新旧2種類を用意しました。1枚目は1992年発売のコンピレーションアルバム「アニメージュ・メモリアル・コレクション」です。この頃はまだ業界の音圧戦争が本格化する前なので、アナログレコードとほぼ同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量は -17.5dBFS です。掲載した試聴用サンプルは、アナログレコードとボーカルの音圧が同じになるように -2dB の音量補正を行っています。
TKCA-30734 (1992/12/21)
LOVEさりげなく (CD 1992)
最大音量 -0.32 dBFS (Peak)
平均音量 -17.5 dBFS (RMS)
CD 1992 (音量補正 -2.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
2枚目のCD音源は、2003年発売のコンピレーションアルバム「アニメージュ 魔法少女コレクション」です。このころになると音圧maxのマスタリングが当たり前になっており、それはもう清々しいまでの海苔波形です。ピークこそ -0.29 dBFS と寸止めしていますが、波形は完全に潰れています。平均音量は -11.0 dBFS と、1992年のCDより実に +6.5dB の音圧アップです。そのまま聞き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用サンプルは -8dB の音量補正を行っています。
TKCA-72599 (2003/10/22) / 再販 TKCA-73948 (2013/8/7)
LOVEさりげなく (CD 2003)
最大音量 -0.29 dBFS (Peak)
平均音量 -11.0 dBFS (RMS)
CD 2003 (音量補正 -8.0dB)
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聞き比べてみた印象はいかがでしょうか? 2003年盤は海苔波形というだけでなく、高域低域を持ち上げてかなりドンシャリな音作りがされています。コンピレーションアルバムなので、他の収録曲との音質バランスをとる必要からやむを得ないのかも知れませんが、ちょっとやりすぎな気がします。また、ボーカルを歪ませないように強烈にコンプがかかっていますので、声量ピークでの不自然な音量低下が耳につきます。「あなたへ飛ぶわ~」の「わ~」の声量が段階的に絞られていくのがわかりますし、アタック感も失われて平板なサビになってしまっています。
本格的なシステムでオーディオを楽しんでいる人たちがごく少数となっている今日、大多数のライトユーザーの試聴環境にあわせて聞きやすいマスタリングにしようという意図はよくわかります。わかるんですが、より良い音質のソースを求めて古いプレスのCDを探すという皮肉な状況は、なんともやるせないものがあります。
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LOVEさりげなく
作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎、編曲:西村昌敏、歌:太田貴子
実はこの曲、B'z結成前の松本孝弘がスタジオミュージシャンとして参加しており、太田貴子の舌足らずなアイドル歌唱とはやや釣り合わない、ド派手なギターソロが間奏に入っていることでも有名です。アニメ本編のED映像は、主人公のアイドルが出演するミュージックビデオ風になっていて、楽曲とよくシンクロする洒落た作画が、女児向けアニメらしからぬ垢抜けた印象を与えていました。
というわけで、まずは1984年発売のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。平均音量は -19.5dBFS です。試聴用には0分50秒あたりからサビの部分を切り出しました。なお、本ページに掲載の音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
ANS-2009 (1984/1/25)
LOVEさりげなく (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -19.5 dBFS (RMS)
17cmシングル
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
次にCD音源ですが、新旧2種類を用意しました。1枚目は1992年発売のコンピレーションアルバム「アニメージュ・メモリアル・コレクション」です。この頃はまだ業界の音圧戦争が本格化する前なので、アナログレコードとほぼ同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量は -17.5dBFS です。掲載した試聴用サンプルは、アナログレコードとボーカルの音圧が同じになるように -2dB の音量補正を行っています。
TKCA-30734 (1992/12/21)
LOVEさりげなく (CD 1992)
最大音量 -0.32 dBFS (Peak)
平均音量 -17.5 dBFS (RMS)
CD 1992 (音量補正 -2.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
2枚目のCD音源は、2003年発売のコンピレーションアルバム「アニメージュ 魔法少女コレクション」です。このころになると音圧maxのマスタリングが当たり前になっており、それはもう清々しいまでの海苔波形です。ピークこそ -0.29 dBFS と寸止めしていますが、波形は完全に潰れています。平均音量は -11.0 dBFS と、1992年のCDより実に +6.5dB の音圧アップです。そのまま聞き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用サンプルは -8dB の音量補正を行っています。
TKCA-72599 (2003/10/22) / 再販 TKCA-73948 (2013/8/7)
アニメージュ 魔法少女コレクション ぴえろ魔法少女シリーズ・ソング集
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 発売日: 2013/08/07
- メディア: CD
最大音量 -0.29 dBFS (Peak)
平均音量 -11.0 dBFS (RMS)
CD 2003 (音量補正 -8.0dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
聞き比べてみた印象はいかがでしょうか? 2003年盤は海苔波形というだけでなく、高域低域を持ち上げてかなりドンシャリな音作りがされています。コンピレーションアルバムなので、他の収録曲との音質バランスをとる必要からやむを得ないのかも知れませんが、ちょっとやりすぎな気がします。また、ボーカルを歪ませないように強烈にコンプがかかっていますので、声量ピークでの不自然な音量低下が耳につきます。「あなたへ飛ぶわ~」の「わ~」の声量が段階的に絞られていくのがわかりますし、アタック感も失われて平板なサビになってしまっています。
本格的なシステムでオーディオを楽しんでいる人たちがごく少数となっている今日、大多数のライトユーザーの試聴環境にあわせて聞きやすいマスタリングにしようという意図はよくわかります。わかるんですが、より良い音質のソースを求めて古いプレスのCDを探すという皮肉な状況は、なんともやるせないものがあります。
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昔のCDの方が高音質? ~夢の舟乗り(ヒデ夕樹)~ 新旧テイク聴き比べ [新旧CD聴き比べ]
時代とともに変わるCDのマスタリングを試聴して検証するこのシリーズ。今回は「キャプテン・フューチャー」の主題歌で、ヒデ夕樹が歌う「夢の舟乗り」をとりあげます。
エドモンド・ハミルトンの古典スペースオペラとして名高い「キャプテン・フューチャー」ですが、日本では1978年にアニメ化され、NHKで約1年間にわたり放映されました。制作は東映動画、劇伴の作曲は大野雄二で、主題歌・挿入歌も全て大野氏の作編曲によるものです。オープニングテーマ「夢の舟乗り」に、ピーカブーの歌うエンディング「ポプラ通りの家」をカップリングした主題歌シングルレコード(SCS-441) が1978年12月に発売になっています。
SCS-441 (1978)
夢の舟乗り/ポプラ通りの家 (17cmシングル盤)
作詞:山川啓介、作曲:大野雄二、歌:ヒデ夕樹/ピーカブー
この ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」なんですが、シングルレコードに収録されているオリジナルテイクと、オンエア途中で再レコーディングされた2ndテイクの2種類の音源が存在しています。オリジナルテイクはマスターテープが破棄されてしまっており、残念ながらデジタル音源が存在していません。現在CD化されている ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」は、全て録り直した2ndテイク版になっています。
実は、「夢の舟乗り」はゴダイゴのタケカワユキヒデが歌うことになっていて、録音も済ませていたのですが、契約上の問題がオンエアまでに解決せず、急遽ヒデ夕樹が起用されて放映がスタートしたようです。ヒデ夕樹歌唱のオープニングは31話まで使われ、それ以降はタケカワ歌唱版に差し替えられました。このあたりの経緯はこちらのページが詳しいので、ご覧ください。
早川優:“アニメの“音”を求めて 第2回「音源復刻への長い道程」”, WEBアニメスタイル
http://www.style.fm/log/05_column/hayakawa02.html
というわけで、まずはオリジナルテイク収録のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
夢の舟乗り (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -18.2 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
次に、CD化されている2ndテイク版を聴いてみましょう。最初は1989年発売のコンピレーションアルバム「続々々・テレビまんが主題のあゆみ」に収録の音源です。
CC-4429~30 (1989/12/21) / 再販 COCX-33633~4 (2006/4/19)
夢の舟乗り (CD 1989年盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -17.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この頃はまだ業界の音圧戦争が始まる前ですので、アナログレコードと同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量も -17.8 dBFS(RMS) と、アナログレコードとさほど変わりません。
そこから時代が流れ、2010年発売の「アニメソング史(ヒストリー) III」(※高音質ブルースペックCD仕様!)に収録の音源が次になります。
COCX-36380~1 (2010/08/18)
夢の舟乗り (CD 2010年盤)
最大音量 -0.19 dBFS (Peak)
平均音量 -13.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
時代の趨勢には逆らえずかなり海苔波形化してしまっており、平均音量は1989年のCDより4.4dBも上がっています。そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用には音量を4dB下げた音声ファイルを掲載しています。聴き比べていただいた印象はいかがでしょうか? 新旧のCD音源の音質差については、ボーカルの抜け(伸び)に着目していただくと、違いが分かりやすいと思います。
一方、新旧テイクの聞き分け方ですが、淡々と歌う1stテイクに対し、2ndテイクはメリハリはっきりの歌いっぷりで、Bメロからサビの「どっちを〜」に入る手前に「ん〜」とハミングが入ります。また、ボーカルの録り直しだけでなくインストも再ミックスされているようで、ギターのパンポット位置が左右逆になっていますし、サビの女声コーラスが1stテイクではセンター定位なのに対し、2ndテイクでは左右両方から聞こえます。間奏のシンセも2ndテイクでは左右に激しく音像を振っていて、かなり派手目をねらったミックスになってますね。
最後に、タケカワ歌唱版の方は普通にCD化されていますので、参考までに掲載しておきます。聴いていただくとわかりますが、1stテイクのインストはこのタケカワ版「夢の舟乗り」と同じ物と思われます。このことからも、タケカワ版が真のオリジナルとして先に存在していたことが強く示唆されています。
夢の舟乗り (タケカワ歌唱版)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
以上、年代別のCD音源の違いと、歌い直しの新旧テイクを聴き比べてみましたが、いかがだったでしょうか? 「いい音を聴きたかったら、なるべく古いプレスのCDを探すべし」というこの業界の笑えない現実は、本当になんとかしてもらいたいものだと思います。
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エドモンド・ハミルトンの古典スペースオペラとして名高い「キャプテン・フューチャー」ですが、日本では1978年にアニメ化され、NHKで約1年間にわたり放映されました。制作は東映動画、劇伴の作曲は大野雄二で、主題歌・挿入歌も全て大野氏の作編曲によるものです。オープニングテーマ「夢の舟乗り」に、ピーカブーの歌うエンディング「ポプラ通りの家」をカップリングした主題歌シングルレコード(SCS-441) が1978年12月に発売になっています。
SCS-441 (1978)
夢の舟乗り/ポプラ通りの家 (17cmシングル盤)
作詞:山川啓介、作曲:大野雄二、歌:ヒデ夕樹/ピーカブー
この ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」なんですが、シングルレコードに収録されているオリジナルテイクと、オンエア途中で再レコーディングされた2ndテイクの2種類の音源が存在しています。オリジナルテイクはマスターテープが破棄されてしまっており、残念ながらデジタル音源が存在していません。現在CD化されている ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」は、全て録り直した2ndテイク版になっています。
実は、「夢の舟乗り」はゴダイゴのタケカワユキヒデが歌うことになっていて、録音も済ませていたのですが、契約上の問題がオンエアまでに解決せず、急遽ヒデ夕樹が起用されて放映がスタートしたようです。ヒデ夕樹歌唱のオープニングは31話まで使われ、それ以降はタケカワ歌唱版に差し替えられました。このあたりの経緯はこちらのページが詳しいので、ご覧ください。
早川優:“アニメの“音”を求めて 第2回「音源復刻への長い道程」”, WEBアニメスタイル
http://www.style.fm/log/05_column/hayakawa02.html
というわけで、まずはオリジナルテイク収録のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
夢の舟乗り (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -18.2 dBFS (RMS)
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次に、CD化されている2ndテイク版を聴いてみましょう。最初は1989年発売のコンピレーションアルバム「続々々・テレビまんが主題のあゆみ」に収録の音源です。
CC-4429~30 (1989/12/21) / 再販 COCX-33633~4 (2006/4/19)
夢の舟乗り (CD 1989年盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -17.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この頃はまだ業界の音圧戦争が始まる前ですので、アナログレコードと同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量も -17.8 dBFS(RMS) と、アナログレコードとさほど変わりません。
そこから時代が流れ、2010年発売の「アニメソング史(ヒストリー) III」(※高音質ブルースペックCD仕様!)に収録の音源が次になります。
COCX-36380~1 (2010/08/18)
夢の舟乗り (CD 2010年盤)
最大音量 -0.19 dBFS (Peak)
平均音量 -13.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
時代の趨勢には逆らえずかなり海苔波形化してしまっており、平均音量は1989年のCDより4.4dBも上がっています。そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用には音量を4dB下げた音声ファイルを掲載しています。聴き比べていただいた印象はいかがでしょうか? 新旧のCD音源の音質差については、ボーカルの抜け(伸び)に着目していただくと、違いが分かりやすいと思います。
一方、新旧テイクの聞き分け方ですが、淡々と歌う1stテイクに対し、2ndテイクはメリハリはっきりの歌いっぷりで、Bメロからサビの「どっちを〜」に入る手前に「ん〜」とハミングが入ります。また、ボーカルの録り直しだけでなくインストも再ミックスされているようで、ギターのパンポット位置が左右逆になっていますし、サビの女声コーラスが1stテイクではセンター定位なのに対し、2ndテイクでは左右両方から聞こえます。間奏のシンセも2ndテイクでは左右に激しく音像を振っていて、かなり派手目をねらったミックスになってますね。
最後に、タケカワ歌唱版の方は普通にCD化されていますので、参考までに掲載しておきます。聴いていただくとわかりますが、1stテイクのインストはこのタケカワ版「夢の舟乗り」と同じ物と思われます。このことからも、タケカワ版が真のオリジナルとして先に存在していたことが強く示唆されています。
夢の舟乗り (タケカワ歌唱版)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
以上、年代別のCD音源の違いと、歌い直しの新旧テイクを聴き比べてみましたが、いかがだったでしょうか? 「いい音を聴きたかったら、なるべく古いプレスのCDを探すべし」というこの業界の笑えない現実は、本当になんとかしてもらいたいものだと思います。
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昔のCDの方が音がいい? ~交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック~ [新旧CD聴き比べ]
昔の音源をCD化する際には大抵「デジタルリマスタリングにより高音質化」が謳われているわけですが、果たして本当に音はよくなってるんでしょうか?
今回はアニメ劇伴の名盤「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」をとりあげます。
宇宙海賊キャプテンハーロックは1978年3月から約1年間にわたり放映されたTVシリーズで、劇伴は横山菁児 (よこやま せいじ) 氏の作曲によるオーケストラサウンドです。前年末の1977年12月に「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」が発売になっており、大編成のオケを贅沢に使った劇伴に追い風が吹いていた時代でした。「ヤマト」の方は豪華なストリングスをプラスしたビッグバンドといった趣なのに対し、「ハーロック」はかなりクラシック寄りの作りになっています。「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」は、劇伴として使う素材を8曲にまとめたもので、オリジナルのLPレコードは1978年5月の発売です。
CQ-7005 (1978/5/25)
交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック (LP)
このアルバムの演奏は熊谷弘指揮の「コロムビア・シンフォニック・オーケストラ」となっていて、LP封入のライナーノートにはオケのメンバ一覧と収録風景が掲載されています。コロムビアのスタジオでの収録と思われ、収録日は1978年2月です。実はその4か月前 (1977年10月) に「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」の収録が同じコロムビアのスタジオで行われており、今回のオケのメンバもおよそ半数は「シンフォニック・オーケストラ・ヤマト」と同じ顔ぶれです。バイオリンには読響の音楽監督退任後のソロ活動時代の小林武史氏が「ヤマト」に引き続き参加されている一方で、ヴィオラ菅沼準ニ、ファゴット霧生吉秀ほか、クラシックの一流どころが新たに加わっているのが目を引きます。
このアルバム、交響組曲と銘打たれてはいますが、そこはアニメの劇伴なので、パートによってはリズムセクションががっつり入ります。しかし、その自由さのおかげで、安倍圭子の荒れ狂うマリンバや、木村好夫のむせび泣くギターなど、当時日本を代表する演奏者たちによる多彩な表現を楽しめる組曲に仕上がっていると言えるのではないでしょうか。筆者のお気に入りの一枚です。
さて、このLPなのですが、残念ながらマスターテープのテープヒスノイズが非常に大きく、通常のボリューム位置で再生してもうるさいくらい耳につきます。1978年当時、このLPレコードをカセットテープに録音すると、Dolby NR無しの場合ですらソースのノイズの方が大きく、曲間の無音部分から曲の頭に入るとノイズが増加するのがはっきりわかりました。
その後1985年に初CD化され、筆者も音質改善を期待して購入しましたが、ノイズに関してはLPとほとんど変わりませんでした。トラックダウンしたマスターテープに入っているノイズを忠実に再現しているのだとすると、これはもうどうにもなりません。CDの場合、曲間は完全に無音になりますので、曲の入りでの「サー」というノイズがいっそう際立つことになりました。
32C35-7667 (1985/12/21) / 再販 COCC-11504 (1994/2/1)
交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック (CD)
そんな中、2001年になると、既発売の音源に加えて未発表音源も網羅するコロムビアの「エターナルエディションシリーズ」として、キャプテンハーロックも再編集盤が発売になりました。「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」に収録の8曲は「ETERNAL EDITION File No.1&2」の中に収められています。
COCX-31697 (2001/11/21)
宇宙海賊キャプテンハーロック エターナルエディションFile1 (CD)
このCDを聴いて最初に驚いたのは、あれほど耳障りだったヒスノイズが、全くと言っていいほど聞こえなくなっていたことです。「これはすごい」「別マスターが発掘されたのか?」と一瞬躍り上がりましたが、1曲目「序曲」の頭からすぐに強烈な違和感を感じることになりました。冒頭、宇宙の海のテーマが打ち寄せる波のように弦で盛り上がっていくのですが、なんというか、音の空気感が失われているというか、圧縮音源っぽい不自然さです。
わかりやすい例として、3曲目「愛」の24秒あたりを聞き比べてみましょう。1985年盤と2001年盤ではマスタリングの音圧も違いますので、同じ音量となるように1985年盤の方はレベルを補正してあります。1985年盤のマスタリングはヘッドルームも十分確保されており、+5.5dBの音量補正を行ってもクリップすることはありません。なお、本ページに掲載の音声ファイルは拡張子が .mp3 となっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
3.愛 0:24 (1985年盤 音量補正+5.5dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
3.愛 0:24 (2001年盤)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この曲はハネケン (羽田健太郎) の甘く囁くようなピアノ・ソロの入りが非常に印象的なのですが、2001年盤の方は高域がこもって倍音が聞こえません。もともとこのアルバムのピアノはややオフ気味のミキシングとなっているのですが、2001年盤はさらに2階席の奥で聞いてるような遠ざかり方です。それでいて、弦の音量が上がっていくと急に高域が聞こえてくるようになります。これはひょっとしてノイズサプレッサがかかっているだけなのでは? と思い、スペクトルを比較してみました。
これはピアノの弱音部分で、赤が1985年盤、紫が2001年盤です。2kHzより上の帯域が20dB近く下がっており、ピアノの倍音のピークも一緒に下げられてしまっています。ハイ上がりのテープヒスノイズの形状がそのまま下にシフトしていますので、ノイズが入る前の別マスターが発掘されたわけではなく、ノイズサプレッサを強くかけてヒスノイズを抑え込んでいる疑いが濃厚です。
こちらは弦の音量が上がってきた部分で、このくらいの音量になると10kHzくらいまではそのまま出るようになりますが、10kHzより上はまだかなり下げられてしまっています。また、音量に関係なく60Hzより下の超低域がごっそり落とされているのがわかります。特にスピーカーで聴いたときに空気感が失われている印象になるのは、この低域カットによるところも大きいと思われます。
もう一箇所、7曲目の「寂光流離(さすらい)」の3分8秒あたりを聞き比べてみましょう。
7.寂光流離 3:08 (1985年盤 音量補正+3.0dB)
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7.寂光流離 3:08 (2001年盤)
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コントラバスを強奏する時に弦を擦る音が2001年盤ではまるっきり聞こえなくなっていますし、中央で奏者が弓を構えるかすかな演奏ノイズも消えてしまっています。この他のパートでも、ファゴットやイングリッシュホルンのバルブの開閉音など、臨場感を感じさせる微小音が軒並み失われているのがわかります。確かに耳障りなヒスノイズはきれいになくなっているのですが、これはちょっとサプレッサのかけ過ぎで、音質的にはかなり残念な仕上がりと言わざるを得ません。
なぜこんなマスタリングになっているのか、その理由を想像すると、「エターナル」は主題歌や他のアルバム音源とのオムニバス構成になっているため、それらとの間のノイズレベルのバランスをとるために強めのノイズ抑圧をせざるを得なかったのかもしれません。一部の曲だけノイズレベルが高いと、事情を知らないカスタマからはクレーム対象となることもありえますので、メーカーとしては辛いところです。
というわけで、ノイズは耳障りではありますが、情報量が多く自然なマスタリングの1985年盤の方を筆者は今も愛聴しております。ここ20年来の業界の音圧競争のおかげで、同じ音源ならなるべく古いプレスのCDを探した方が高音質、という実に情けない状況になってしまっていますが、本作もその災難からのがれることはできなかったという事でしょうか。ハイビットでのデジタルリマスタリングは大いに結構なのですが、できれば余計な化粧を頑張るのではなく、現存するマスターを忠実に再現する方向でお願いしたいものだと切に思います。
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今回はアニメ劇伴の名盤「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」をとりあげます。
宇宙海賊キャプテンハーロックは1978年3月から約1年間にわたり放映されたTVシリーズで、劇伴は横山菁児 (よこやま せいじ) 氏の作曲によるオーケストラサウンドです。前年末の1977年12月に「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」が発売になっており、大編成のオケを贅沢に使った劇伴に追い風が吹いていた時代でした。「ヤマト」の方は豪華なストリングスをプラスしたビッグバンドといった趣なのに対し、「ハーロック」はかなりクラシック寄りの作りになっています。「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」は、劇伴として使う素材を8曲にまとめたもので、オリジナルのLPレコードは1978年5月の発売です。
CQ-7005 (1978/5/25)
交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック (LP)
交響組曲『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』 [12" Analog LP Record]
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- メディア: LP Record
このアルバムの演奏は熊谷弘指揮の「コロムビア・シンフォニック・オーケストラ」となっていて、LP封入のライナーノートにはオケのメンバ一覧と収録風景が掲載されています。コロムビアのスタジオでの収録と思われ、収録日は1978年2月です。実はその4か月前 (1977年10月) に「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」の収録が同じコロムビアのスタジオで行われており、今回のオケのメンバもおよそ半数は「シンフォニック・オーケストラ・ヤマト」と同じ顔ぶれです。バイオリンには読響の音楽監督退任後のソロ活動時代の小林武史氏が「ヤマト」に引き続き参加されている一方で、ヴィオラ菅沼準ニ、ファゴット霧生吉秀ほか、クラシックの一流どころが新たに加わっているのが目を引きます。
このアルバム、交響組曲と銘打たれてはいますが、そこはアニメの劇伴なので、パートによってはリズムセクションががっつり入ります。しかし、その自由さのおかげで、安倍圭子の荒れ狂うマリンバや、木村好夫のむせび泣くギターなど、当時日本を代表する演奏者たちによる多彩な表現を楽しめる組曲に仕上がっていると言えるのではないでしょうか。筆者のお気に入りの一枚です。
さて、このLPなのですが、残念ながらマスターテープのテープヒスノイズが非常に大きく、通常のボリューム位置で再生してもうるさいくらい耳につきます。1978年当時、このLPレコードをカセットテープに録音すると、Dolby NR無しの場合ですらソースのノイズの方が大きく、曲間の無音部分から曲の頭に入るとノイズが増加するのがはっきりわかりました。
その後1985年に初CD化され、筆者も音質改善を期待して購入しましたが、ノイズに関してはLPとほとんど変わりませんでした。トラックダウンしたマスターテープに入っているノイズを忠実に再現しているのだとすると、これはもうどうにもなりません。CDの場合、曲間は完全に無音になりますので、曲の入りでの「サー」というノイズがいっそう際立つことになりました。
32C35-7667 (1985/12/21) / 再販 COCC-11504 (1994/2/1)
交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック (CD)
そんな中、2001年になると、既発売の音源に加えて未発表音源も網羅するコロムビアの「エターナルエディションシリーズ」として、キャプテンハーロックも再編集盤が発売になりました。「交響組曲 宇宙海賊キャプテンハーロック」に収録の8曲は「ETERNAL EDITION File No.1&2」の中に収められています。
COCX-31697 (2001/11/21)
宇宙海賊キャプテンハーロック エターナルエディションFile1 (CD)
宇宙海賊キャプテンハーロック ETERNAL EDITION 1&2
- アーティスト: 水木一郎,熊谷弘,岡本仁,コロムビア・オーケストラ,YUMI&MINA,コロムビア・シンフォニック・オーケストラ,田中瑤子
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 2001/11/21
- メディア: CD
このCDを聴いて最初に驚いたのは、あれほど耳障りだったヒスノイズが、全くと言っていいほど聞こえなくなっていたことです。「これはすごい」「別マスターが発掘されたのか?」と一瞬躍り上がりましたが、1曲目「序曲」の頭からすぐに強烈な違和感を感じることになりました。冒頭、宇宙の海のテーマが打ち寄せる波のように弦で盛り上がっていくのですが、なんというか、音の空気感が失われているというか、圧縮音源っぽい不自然さです。
わかりやすい例として、3曲目「愛」の24秒あたりを聞き比べてみましょう。1985年盤と2001年盤ではマスタリングの音圧も違いますので、同じ音量となるように1985年盤の方はレベルを補正してあります。1985年盤のマスタリングはヘッドルームも十分確保されており、+5.5dBの音量補正を行ってもクリップすることはありません。なお、本ページに掲載の音声ファイルは拡張子が .mp3 となっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
3.愛 0:24 (1985年盤 音量補正+5.5dB)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
3.愛 0:24 (2001年盤)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この曲はハネケン (羽田健太郎) の甘く囁くようなピアノ・ソロの入りが非常に印象的なのですが、2001年盤の方は高域がこもって倍音が聞こえません。もともとこのアルバムのピアノはややオフ気味のミキシングとなっているのですが、2001年盤はさらに2階席の奥で聞いてるような遠ざかり方です。それでいて、弦の音量が上がっていくと急に高域が聞こえてくるようになります。これはひょっとしてノイズサプレッサがかかっているだけなのでは? と思い、スペクトルを比較してみました。
これはピアノの弱音部分で、赤が1985年盤、紫が2001年盤です。2kHzより上の帯域が20dB近く下がっており、ピアノの倍音のピークも一緒に下げられてしまっています。ハイ上がりのテープヒスノイズの形状がそのまま下にシフトしていますので、ノイズが入る前の別マスターが発掘されたわけではなく、ノイズサプレッサを強くかけてヒスノイズを抑え込んでいる疑いが濃厚です。
こちらは弦の音量が上がってきた部分で、このくらいの音量になると10kHzくらいまではそのまま出るようになりますが、10kHzより上はまだかなり下げられてしまっています。また、音量に関係なく60Hzより下の超低域がごっそり落とされているのがわかります。特にスピーカーで聴いたときに空気感が失われている印象になるのは、この低域カットによるところも大きいと思われます。
もう一箇所、7曲目の「寂光流離(さすらい)」の3分8秒あたりを聞き比べてみましょう。
7.寂光流離 3:08 (1985年盤 音量補正+3.0dB)
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7.寂光流離 3:08 (2001年盤)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
コントラバスを強奏する時に弦を擦る音が2001年盤ではまるっきり聞こえなくなっていますし、中央で奏者が弓を構えるかすかな演奏ノイズも消えてしまっています。この他のパートでも、ファゴットやイングリッシュホルンのバルブの開閉音など、臨場感を感じさせる微小音が軒並み失われているのがわかります。確かに耳障りなヒスノイズはきれいになくなっているのですが、これはちょっとサプレッサのかけ過ぎで、音質的にはかなり残念な仕上がりと言わざるを得ません。
なぜこんなマスタリングになっているのか、その理由を想像すると、「エターナル」は主題歌や他のアルバム音源とのオムニバス構成になっているため、それらとの間のノイズレベルのバランスをとるために強めのノイズ抑圧をせざるを得なかったのかもしれません。一部の曲だけノイズレベルが高いと、事情を知らないカスタマからはクレーム対象となることもありえますので、メーカーとしては辛いところです。
というわけで、ノイズは耳障りではありますが、情報量が多く自然なマスタリングの1985年盤の方を筆者は今も愛聴しております。ここ20年来の業界の音圧競争のおかげで、同じ音源ならなるべく古いプレスのCDを探した方が高音質、という実に情けない状況になってしまっていますが、本作もその災難からのがれることはできなかったという事でしょうか。ハイビットでのデジタルリマスタリングは大いに結構なのですが、できれば余計な化粧を頑張るのではなく、現存するマスターを忠実に再現する方向でお願いしたいものだと切に思います。
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タグ:CD音質
2019-01-27 13:26
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