昔のCDの方が高音質? ~夢の舟乗り(ヒデ夕樹)~ 新旧テイク聴き比べ [新旧CD聴き比べ]
時代とともに変わるCDのマスタリングを試聴して検証するこのシリーズ。今回は「キャプテン・フューチャー」の主題歌で、ヒデ夕樹が歌う「夢の舟乗り」をとりあげます。
エドモンド・ハミルトンの古典スペースオペラとして名高い「キャプテン・フューチャー」ですが、日本では1978年にアニメ化され、NHKで約1年間にわたり放映されました。制作は東映動画、劇伴の作曲は大野雄二で、主題歌・挿入歌も全て大野氏の作編曲によるものです。オープニングテーマ「夢の舟乗り」に、ピーカブーの歌うエンディング「ポプラ通りの家」をカップリングした主題歌シングルレコード(SCS-441) が1978年12月に発売になっています。
SCS-441 (1978)
夢の舟乗り/ポプラ通りの家 (17cmシングル盤)
作詞:山川啓介、作曲:大野雄二、歌:ヒデ夕樹/ピーカブー
この ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」なんですが、シングルレコードに収録されているオリジナルテイクと、オンエア途中で再レコーディングされた2ndテイクの2種類の音源が存在しています。オリジナルテイクはマスターテープが破棄されてしまっており、残念ながらデジタル音源が存在していません。現在CD化されている ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」は、全て録り直した2ndテイク版になっています。
実は、「夢の舟乗り」はゴダイゴのタケカワユキヒデが歌うことになっていて、録音も済ませていたのですが、契約上の問題がオンエアまでに解決せず、急遽ヒデ夕樹が起用されて放映がスタートしたようです。ヒデ夕樹歌唱のオープニングは31話まで使われ、それ以降はタケカワ歌唱版に差し替えられました。このあたりの経緯はこちらのページが詳しいので、ご覧ください。
早川優:“アニメの“音”を求めて 第2回「音源復刻への長い道程」”, WEBアニメスタイル
http://www.style.fm/log/05_column/hayakawa02.html
というわけで、まずはオリジナルテイク収録のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
夢の舟乗り (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -18.2 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
次に、CD化されている2ndテイク版を聴いてみましょう。最初は1989年発売のコンピレーションアルバム「続々々・テレビまんが主題のあゆみ」に収録の音源です。
CC-4429~30 (1989/12/21) / 再販 COCX-33633~4 (2006/4/19)
夢の舟乗り (CD 1989年盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -17.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この頃はまだ業界の音圧戦争が始まる前ですので、アナログレコードと同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量も -17.8 dBFS(RMS) と、アナログレコードとさほど変わりません。
そこから時代が流れ、2010年発売の「アニメソング史(ヒストリー) III」(※高音質ブルースペックCD仕様!)に収録の音源が次になります。
COCX-36380~1 (2010/08/18)
夢の舟乗り (CD 2010年盤)
最大音量 -0.19 dBFS (Peak)
平均音量 -13.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
時代の趨勢には逆らえずかなり海苔波形化してしまっており、平均音量は1989年のCDより4.4dBも上がっています。そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用には音量を4dB下げた音声ファイルを掲載しています。聴き比べていただいた印象はいかがでしょうか? 新旧のCD音源の音質差については、ボーカルの抜け(伸び)に着目していただくと、違いが分かりやすいと思います。
一方、新旧テイクの聞き分け方ですが、淡々と歌う1stテイクに対し、2ndテイクはメリハリはっきりの歌いっぷりで、Bメロからサビの「どっちを〜」に入る手前に「ん〜」とハミングが入ります。また、ボーカルの録り直しだけでなくインストも再ミックスされているようで、ギターのパンポット位置が左右逆になっていますし、サビの女声コーラスが1stテイクではセンター定位なのに対し、2ndテイクでは左右両方から聞こえます。間奏のシンセも2ndテイクでは左右に激しく音像を振っていて、かなり派手目をねらったミックスになってますね。
最後に、タケカワ歌唱版の方は普通にCD化されていますので、参考までに掲載しておきます。聴いていただくとわかりますが、1stテイクのインストはこのタケカワ版「夢の舟乗り」と同じ物と思われます。このことからも、タケカワ版が真のオリジナルとして先に存在していたことが強く示唆されています。
夢の舟乗り (タケカワ歌唱版)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
以上、年代別のCD音源の違いと、歌い直しの新旧テイクを聴き比べてみましたが、いかがだったでしょうか? 「いい音を聴きたかったら、なるべく古いプレスのCDを探すべし」というこの業界の笑えない現実は、本当になんとかしてもらいたいものだと思います。
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エドモンド・ハミルトンの古典スペースオペラとして名高い「キャプテン・フューチャー」ですが、日本では1978年にアニメ化され、NHKで約1年間にわたり放映されました。制作は東映動画、劇伴の作曲は大野雄二で、主題歌・挿入歌も全て大野氏の作編曲によるものです。オープニングテーマ「夢の舟乗り」に、ピーカブーの歌うエンディング「ポプラ通りの家」をカップリングした主題歌シングルレコード(SCS-441) が1978年12月に発売になっています。
SCS-441 (1978)
夢の舟乗り/ポプラ通りの家 (17cmシングル盤)
作詞:山川啓介、作曲:大野雄二、歌:ヒデ夕樹/ピーカブー
この ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」なんですが、シングルレコードに収録されているオリジナルテイクと、オンエア途中で再レコーディングされた2ndテイクの2種類の音源が存在しています。オリジナルテイクはマスターテープが破棄されてしまっており、残念ながらデジタル音源が存在していません。現在CD化されている ヒデ夕樹 歌唱の「夢の舟乗り」は、全て録り直した2ndテイク版になっています。
実は、「夢の舟乗り」はゴダイゴのタケカワユキヒデが歌うことになっていて、録音も済ませていたのですが、契約上の問題がオンエアまでに解決せず、急遽ヒデ夕樹が起用されて放映がスタートしたようです。ヒデ夕樹歌唱のオープニングは31話まで使われ、それ以降はタケカワ歌唱版に差し替えられました。このあたりの経緯はこちらのページが詳しいので、ご覧ください。
早川優:“アニメの“音”を求めて 第2回「音源復刻への長い道程」”, WEBアニメスタイル
http://www.style.fm/log/05_column/hayakawa02.html
というわけで、まずはオリジナルテイク収録のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。
夢の舟乗り (17cmシングル盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -18.2 dBFS (RMS)
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次に、CD化されている2ndテイク版を聴いてみましょう。最初は1989年発売のコンピレーションアルバム「続々々・テレビまんが主題のあゆみ」に収録の音源です。
CC-4429~30 (1989/12/21) / 再販 COCX-33633~4 (2006/4/19)
夢の舟乗り (CD 1989年盤)
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -17.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この頃はまだ業界の音圧戦争が始まる前ですので、アナログレコードと同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量も -17.8 dBFS(RMS) と、アナログレコードとさほど変わりません。
そこから時代が流れ、2010年発売の「アニメソング史(ヒストリー) III」(※高音質ブルースペックCD仕様!)に収録の音源が次になります。
COCX-36380~1 (2010/08/18)
夢の舟乗り (CD 2010年盤)
最大音量 -0.19 dBFS (Peak)
平均音量 -13.8 dBFS (RMS)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
時代の趨勢には逆らえずかなり海苔波形化してしまっており、平均音量は1989年のCDより4.4dBも上がっています。そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用には音量を4dB下げた音声ファイルを掲載しています。聴き比べていただいた印象はいかがでしょうか? 新旧のCD音源の音質差については、ボーカルの抜け(伸び)に着目していただくと、違いが分かりやすいと思います。
一方、新旧テイクの聞き分け方ですが、淡々と歌う1stテイクに対し、2ndテイクはメリハリはっきりの歌いっぷりで、Bメロからサビの「どっちを〜」に入る手前に「ん〜」とハミングが入ります。また、ボーカルの録り直しだけでなくインストも再ミックスされているようで、ギターのパンポット位置が左右逆になっていますし、サビの女声コーラスが1stテイクではセンター定位なのに対し、2ndテイクでは左右両方から聞こえます。間奏のシンセも2ndテイクでは左右に激しく音像を振っていて、かなり派手目をねらったミックスになってますね。
最後に、タケカワ歌唱版の方は普通にCD化されていますので、参考までに掲載しておきます。聴いていただくとわかりますが、1stテイクのインストはこのタケカワ版「夢の舟乗り」と同じ物と思われます。このことからも、タケカワ版が真のオリジナルとして先に存在していたことが強く示唆されています。
夢の舟乗り (タケカワ歌唱版)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
以上、年代別のCD音源の違いと、歌い直しの新旧テイクを聴き比べてみましたが、いかがだったでしょうか? 「いい音を聴きたかったら、なるべく古いプレスのCDを探すべし」というこの業界の笑えない現実は、本当になんとかしてもらいたいものだと思います。
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