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ウィーンブリッジ発振回路 [エレクトロニクス]

 1988年製作のオーディオオシレータです。可聴帯域 (20Hz~20kHz) を3バンドでカバーし、低歪の正弦波を出力します。当時の設計コンセプトは以下のようなものでした。
・オペアンプ1石
・単電源 (電池駆動)
・ジャンク部品再利用

CM-356OSC.jpg

CM-356OSC-i.jpg

AudioOcsillator_sch2.jpg

 回路方式はJFETによる利得制御付きのウィーンブリッジ発振回路です。オペアンプはBiFETオペアンプの走りとして一時代を築いた LF356N を使用しています。製作当時は学生でしたので、ジャンク部品を再利用することで極力お金をかけずに作ることに設計の主眼が置かれています。新規で購入したのはアルミケースとノブくらいです。
 周波数の可変には 30kΩ Aカーブの可変抵抗を使用しています。これは当時使用していた自作RIAAイコライザアンプのボリュームがガリオームになってしまったので、交換した廃品の再利用です。発振周波数は抵抗値の逆数で決まりますので、BカーブのVRでは周波数が高い側で回転角度に対する周波数変化が急激に大きくなり、非常に使いずらくなってしまいます。AカーブのVRを使うとそのあたりの使い勝手は改善されますが、反時計回りで周波数が高くなるのが難点です。市販のファンクションジェネレータのように、回転するノブ側に目盛りを付けると回転方向が逆でもあまり気にならなくなりますが、今回はそこまでしていません。
 006Pによる単電源・電池駆動としたかったので、抵抗分割+エミッタフォロワで中点電位を作っています。振幅検出はダイオードによる負ピークホールドで、アタック 4.7kΩ、ディケイ 100kΩ の時定数比で負側のピークをトレースします。ループフィルタを兼ねたホールドキャパシタを1uFとしていますが、20~200Hz レンジのみ 3.3uF を並列に追加しています。これは低周波発振時にリプル除去が不足して歪率が悪化するのを防ぐためですが、その代わりこのレンジでは発振が安定するまでに時間を要することになります。ウィーンブリッジ発振回路では、広い周波数範囲での発振安定性と歪率を両立させることはなかなか大変です。オペアンプ1石というシバりがなければ、振幅検出~ループフィルタにもっと回路資産を投入して最適化したいところです。

THD1kHz-4.png

 WaveSpectra による 1kHz の歪率の実測結果を示します。THD+N で 0.02% 程度となっています。製作当時に研究室の自動同調の歪率計で実測した全高調波歪率が 0.03% 前後でしたので、ほぼ同等の結果が得られています。今ではPCからDACをドライブして低歪な正弦波が手軽に出せるようになりましたが、本機はポータブルな低歪信号源として長らく活躍してくれました。製作当時は18kHzあたりまで聞こえていた筆者の耳も、今では15kHz以上は全く聞こえません。歳はとりたくないものですね。

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タグ:電子工作
コメント(1) 
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コメント 1

ZebrafishPapa

学生時代に作られたとのことですが、回路・基板実装、そして何よりケーシングが美しく感服いたしました。私ももう、ツイーターなどあんなにうるさいと思っていたのにといった感じです。
by ZebrafishPapa (2022-12-19 06:58) 

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