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昔のCDの方が高音質? ~LOVEさりげなく(太田貴子)~ [新旧CD聴き比べ]

 時代とともに変わるCDのマスタリングを試聴して検証するこのシリーズ。今回は「魔法の天使クリィミーマミ」後期ED曲で、太田貴子が歌う「LOVEさりげなく」をとりあげます。

LOVEさりげなく
作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎、編曲:西村昌敏、歌:太田貴子

 実はこの曲、B'z結成前の松本孝弘がスタジオミュージシャンとして参加しており、太田貴子の舌足らずなアイドル歌唱とはやや釣り合わない、ド派手なギターソロが間奏に入っていることでも有名です。アニメ本編のED映像は、主人公のアイドルが出演するミュージックビデオ風になっていて、楽曲とよくシンクロする洒落た作画が、女児向けアニメらしからぬ垢抜けた印象を与えていました。

 というわけで、まずは1984年発売のシングルレコードの波形を見てみます。44.1kHz/16bitでサンプリングし、ピーク値がフルスケールとなるように音量を規格化しています。平均音量は -19.5dBFS です。試聴用には0分50秒あたりからサビの部分を切り出しました。なお、本ページに掲載の音声ファイルの拡張子は.mp3になっていますが、中身は非圧縮の.wav (44.1kHz/16bit) です。

ANS-2009 (1984/1/25)
sarigenaku_jacket1.jpgsarigenaku_jacket2.jpg
LOVEさりげなく (17cmシングル盤)
sarigenaku_waveform_EP.jpg
最大音量 -0.00 dBFS (Peak)
平均音量 -19.5 dBFS (RMS)
17cmシングル

 次にCD音源ですが、新旧2種類を用意しました。1枚目は1992年発売のコンピレーションアルバム「アニメージュ・メモリアル・コレクション」です。この頃はまだ業界の音圧戦争が本格化する前なので、アナログレコードとほぼ同様の実に自然な波形で収録されています。平均音量は -17.5dBFS です。掲載した試聴用サンプルは、アナログレコードとボーカルの音圧が同じになるように -2dB の音量補正を行っています。

TKCA-30734 (1992/12/21)
アニメージュ・メモリアル・コレクション

アニメージュ・メモリアル・コレクション

  • 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
  • 発売日: 1992/12/21
  • メディア: CD
LOVEさりげなく (CD 1992)sarigenaku_waveform_CD1992.jpg
最大音量 -0.32 dBFS (Peak)
平均音量 -17.5 dBFS (RMS)
CD 1992 (音量補正 -2.0dB)

 2枚目のCD音源は、2003年発売のコンピレーションアルバム「アニメージュ 魔法少女コレクション」です。このころになると音圧maxのマスタリングが当たり前になっており、それはもう清々しいまでの海苔波形です。ピークこそ -0.29 dBFS と寸止めしていますが、波形は完全に潰れています。平均音量は -11.0 dBFS と、1992年のCDより実に +6.5dB の音圧アップです。そのまま聞き比べるには音圧が違いすぎますので、試聴用サンプルは -8dB の音量補正を行っています。

TKCA-72599 (2003/10/22) / 再販 TKCA-73948 (2013/8/7)
アニメージュ 魔法少女コレクション ぴえろ魔法少女シリーズ・ソング集

アニメージュ 魔法少女コレクション ぴえろ魔法少女シリーズ・ソング集

  • 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: CD
LOVEさりげなく (CD 2003)sarigenaku_waveform_CD2003.jpg
最大音量 -0.29 dBFS (Peak)
平均音量 -11.0 dBFS (RMS)
CD 2003 (音量補正 -8.0dB)

 聞き比べてみた印象はいかがでしょうか? 2003年盤は海苔波形というだけでなく、高域低域を持ち上げてかなりドンシャリな音作りがされています。コンピレーションアルバムなので、他の収録曲との音質バランスをとる必要からやむを得ないのかも知れませんが、ちょっとやりすぎな気がします。また、ボーカルを歪ませないように強烈にコンプがかかっていますので、声量ピークでの不自然な音量低下が耳につきます。「あなたへ飛ぶわ~」の「わ~」の声量が段階的に絞られていくのがわかりますし、アタック感も失われて平板なサビになってしまっています。
 本格的なシステムでオーディオを楽しんでいる人たちがごく少数となっている今日、大多数のライトユーザーの試聴環境にあわせて聞きやすいマスタリングにしようという意図はよくわかります。わかるんですが、より良い音質のソースを求めて古いプレスのCDを探すという皮肉な状況は、なんともやるせないものがあります。

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