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ハイレゾ音源、レーベル公式YouTube音源と、TV放送の音質を比較 [検証可能な音質比較]

 海苔波形化したCD音源よりも、TV番組をエアチェックした方が音質が良い場合があることはこのページでも以前にご紹介しましたが、ハイレゾ音源やレーベル公式YouTube音源の場合はどうなのでしょうか? 例によってサンプルを用意しましたので、聴き比べてみましょう。
 今回の試聴曲は「恋する小惑星(アステロイド)」のエンディングテーマで、鈴木みのりが歌う「夜空」です。

夜空(通常盤)

夜空(通常盤)

  • アーティスト: 鈴木みのり
  • 出版社/メーカー: フライングドッグ
  • 発売日: 2020/02/12
  • メディア: CD

Yozora_MX_curedit.jpg

 動画工房制作のこの作品、絵面に反して結構真面目な地学アニメになっていてびっくりです。エンディングはしっとりとしたバラードで、オンエアではラストの本編セリフにこの曲のイントロがかぶってくる演出になっています。
 比較するのは以下の3音源になります。

1) ハイレゾ音源 (48kHz wav 24bit)
mora https://mora.jp/package/43000005/VTCL-35311_F/
e-onkyo https://www.e-onkyo.com/music/album/veahd12216/

2) YouTube ビクター公式MV (48kHz Opus 128kbps)
鈴木みのり - 『夜空』(Short Ver.)
https://www.youtube.com/watch?v=Ct-zSVAldXc

3) TV放送エアチェック (48kHz MPEG-2 AAC-LC 256kbps)
東京MX 第1話 (2020/1/3)
https://s.mxtv.jp/anime/koiastv/

 まずは伝送帯域を確認してみましょう。1コーラス目のサビの途中、1分01秒付近のスペクトルを以下に掲載しました。3音源ともサンプリング周波数は48kHzで同じです。帯域制限がわかりやすいように周波数軸はリニア表示にしています。

Yozora_PSD_HiRes1.png
Yozora_PSD_YouTube1.png
Yozora_PSD_MX1.png

 ハイレゾ音源はそれほど高域を欲張らず、22kHzでロールオフしています。帯域的にはCDと大差ないのでハイレゾの旨味はあまりありませんが、そもそも筆者の耳には全く聞こえない帯域の話なので、ここは特に問題ありません。
 YouTube は Opus 128kbps での配信となっており、高域は20kHzまで出ています。Opus や AAC-LC といった最近のコーデックは 128kbps でも圧縮臭さがあまりなく、そこそこ HiFi 再生に耐え得る品質になっています。実際、かなり注意深く聴かないと圧縮前後の差はわからないと思います。
 TVのオンエア音源は東京MXの本放送第1話の録画からとってきました。こちらも高域は20kHzまで出ています。地デジは放送局によって音声の伝送帯域上限が結構バラバラなのですが、東京MXはかなり頑張ってくれています。音声は AAC-LC 256kbps のはずで、圧縮臭さはほとんど感じられません

 次に、各音源の1コーラス目の波形(L-ch のみ)を以下に示します。TV音声はヘッドルームが大きく空いており、最大音量でもフルスケールの半分くらいまでしか使われていませんので、TV音源だけはピーク値がフルスケールとなるように正規化を行っています。

Yozora_waveform5.png

 まずはハイレゾ音源ですが、残念ながらかなり海苔波形化してしまっており、サビでは完全にピークが潰れています。ハイレゾ販売ということで、多少なりとも高音質を期待して購入したのですが、いささかがっかりな波形です。平均音量は -12.0 dBFS です。
 YouTubeもハイレゾとほぼ同じ傾向で、同一マスタリング音源からの流用と思われます。平均音量も -12.6 dBFS とハイレゾと大差ありません。楽曲のプロモーションが目的なので当然なのかもしれませんが、ラウドネス規制が導入されてもなかなか状況は改善してくれませんね。
 一方、オンエアのTVサイズは音圧加工前の音源を使ってくれているようで、平均音量は -15.8 dBFS と 4dB 程度小さくなっています。サビのピーク潰れもその分少なく、わりと良心的な波形です。冒頭10秒の波形が他と異なっているのは、本編セリフが被ってることによるものです。

 それでは、実際に音の違いを聴き比べてみましょう。0分46秒あたりから15秒ほどを切り出しています。ハイレゾは 48kHz/24bit の wav ですので、他の音源も同じフォーマットに変換しました。ファイルの拡張子は .mp3 になっていますが、中身は全て非圧縮の .wav です。なお、そのまま聴き比べるには音圧が違いすぎますので、例によってボーカルの音圧が同じになるようにハイレゾと YouTube は音量を補正してあります。

鈴木みのり「夜空」 ハイレゾ (音量補正 -4.0dB)

鈴木みのり「夜空」 YouTube (音量補正 -4.0dB)

鈴木みのり「夜空」 TV (東京MX)

 いかがでしょうか? 一聴したところでは、ピークが潰されているはずのハイレゾのサビの部分も、それほど破綻なく聴こえます。ボーカルの歪み感も全くと言っていいほどありません。巧みなマスタリングだと思います。流して聞いている分にはまず違いはわからないのではないでしょうか。
 ただ、じっくり聴き込むとやはり不満な点が出てきます。「旅しよ〜」の「よ〜」がTVではクリアにボーカルが伸びてるんですが、ハイレゾやYouTubeでは息をついた感じになります。ドラムやベースの低域のアタック感もだいぶ違います。サビのボーカルの背後で鳴ってる音が、ハイレゾではごちゃっとして聞こえるのに対し、TVは分離よく聞こえます。これについては、右側で鳴っているハイハットに注目すると違いがわかりやすいと思います。YouTubeではさらに圧縮で音がザラつきますので、聴き分けは比較的容易です。

 以上、ハイレゾやYouTube音源とTV放送の音質を比較してみましたが、いかがだったでしょうか。せっかくの 24bit 深度のハイレゾも、この海苔波形では台無しです。これならCDの 16bit でも十分ですね。まがりなりにもハイレゾと称して高い値付けをしているわけですから、もう少しなんとかしてほしいと思います。

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